ネットワークの基礎講座

IP(インターネット・プロトコル)

ユニキャスト、ブロードキャスト、マルチキャスト


 

 


大多数のIPアドレスは特定のホストを示しており、これをユニキャスト(Unicast)アドレスという。しかしながら前述のように複数のホストを指定する二つの特別な形式のアドレス、つまりブロードキャストとマルチキャスト・アドレスが存在する。これらのアドレスは複数の受信者にメッセージを送信するのに使用される。ブロードキャストとかマルチキャストとかはコネクション・レスの通信プロトコルに共通した概念である。コネクション型のネットワークでは、すでにホスト間のコネクションが成立しているのでユニキャスト・アドレスしか存在しない。たとえばX.25TCPはコネクション型のプロトコルなので、このような概念はない。

 

IPの規約では全部のビットが1のものは「全部」を意味することはすでに述べた。ブロードキャスト・アドレスは宛先フィールドでのみ有効で、送信元につけてはいけない。ブロードキャストはデータグラムの送信用に使われるのでなく、それに必要な情報の取得など制御用に使用される。

 

限定用途のブロードキャスト・アドレスとして255.255.255.255IPアドレスの全部が1)がある。これはこのサブネット上のすべてのホストを意味し、ルータはこれを転送してはいけない。

 

サブネット化されておらず、かつネットワーク番号が指定されているブロードキャスト・アドレス(たとえば128.1.255.255)はそのネットワーク上の総てのホストを指定する。ルータは特にそうしないように設定されていない限りこれを転送する。これはサブネット化されていないネットワーク上でのARP(アドレス解決)の要求に使われる。

 

サブネット化されたネットワークで、ネットワーク番号とサブネット番号が有効なものであれば、これはそのサブネット上の総てのホストを指定することになる。送信元と受信者のサブネット・マスクが異なる場合もあるので、ターゲットのホストのサブネット・マスクを知っている必要がある。したがって現実にはルータが配下のホストに対してブロードキャストすることになる。

 

あるサブネット化されているネットワーク上の総てのサブネットへのブロードキャストもある。ネットワーク番号が有効で、サブネット番号の部分とホスト番号の部分(つまりローカル部)が総て1の場合である(たとえば128.1.255.255)。この場合はこのサブネット化されているネットワーク上の総てのホストを対象としている。原則的にはルータはこのパケットを総てのサブネットに伝播させても良いが、そうしないように設定するのが通常である。

 

ブロードキャストは総てのホストがこれを受信しなければならない。したがってオーバーヘッドがかかることになる。マルチキャストは指定されたグループのホストだけが受信すればよいので、そのような用途には好ましい。その目的のためにクラスDアドレスが用意されている。グループのアドレス・フィールドは28ビットの幅がある(224.0.0.0から239.255.255.255まで)。これらのアドレスには固定されているものがある。

 

224.0.0.0:            ベース・アドレスとして予約済み

224.0.0.1:            このサブネット上の総てのシステム

224.0.0.2:            このサブネット上の総てのルータ

224.0.0.5:            総てのOSPFルータ

224.0.0.6:            OSPF指定ルータ

 

 

 

 

前節     目次     次節