ネットワークの基礎講座

IP(インターネット・プロトコル)

サブネット


 

 


あるネットワークにおいて、ある場所で新しい物理ネットワークが追加されたとか、ホストの数が大きくなって二つ以上のネットワークにしなければならなくなったなどという事態は企業の場合は頻繁に生じる。たとえば新しく工場が設置されたとか、二つの組織に発展的に分割したとかである。このような場合に、サブネットという概念は非常に有用である。

 

IPアドレスのホスト番号の部分はさらにネットワーク番号とホスト番号に分割して取り扱うことができる。この第二のネットワーク番号の部分をサブネットワークあるいはサブネット(和製英語ではなく、ちゃんとしたSubnetという英語になっている)という。この概念を入れると、

IPアドレス = <ネットワーク番号><サブネット番号><ホスト番号>

となる。サブネット番号とホスト番号の部分を合わせた部分を「ローカル・アドレス(Local address)」とか「ローカル部(local Part)」という。サブネット化は、リモートのネットワークからは透過的な形で実装される。すなわちそのネットワーク内のホストはサブネット化を認識しても、別のネットワークに居るホストはそうではなく単にそのIPアドレスのローカル部としか認識しない。各ホストは自分のIPアドレスだけでなく、自分がどのサブネットに属するかをサブネット・マスクというかたちで知っていなければならない。IPアドレスとサブネット・マスクから、サブネット番号を知ることができるからである。つまりIPアドレスのローカル部からサブネット・マスクのビットに対応する部分だけを取り出しビット列とすればそれがサブネット番号であり、残りのビットをひとつのビット列とすればそれがホスト番号となる。

 

例えばクラスBのネットワークはローカル部が16ビット存在する。14通り(左からマスクを設定したとき、そうでなければもっと多く)のサブネット・マスクが考えられるが、これを例えば次のようにサブネット化することができる。オール1やオール0のサブネット番号やホスト番号は特別の意味を持つのは今までと同じである。

·           最初の8ビットをサブネット番号、残りの8ビットをホスト番号に割当てる。こうすると254(256-2)のサブネットとサブネットあたり254のホストのローカル・ネットワークが構成できる。この場合のサブネット・マスクは255.255.255.0である。ホストは自分が下8ビットのホスト空間に属することを認識する。

·           最初の12ビットをサブネット番号に、下4ビットをホスト番号に割当てる。こうすると4094(4096-2)のサブネットが持てるが、サブネットあたりのホストの数は最大14(16-2)となってしまう。この場合のサブネット・マスクは255.255.255.240である。

 

ローカル部のサブネットとホスト部との分割はそのネットワークの管理者の裁量にまかされている。したがって必ずしも上のビットをサブネット番号に割当てる必要もないが、見易さのために通常は上側のビットをサブネット番号に割当てる。例えば255.255.252.252などというサブネット・マスクも存在し得るが推奨できない。

 

サブネット化の方式にはサブネット番号部分(フィールド)の長さが固定されている静的なものと可変のものがある。可変長のほうがよりフレキシブルだといえよう。どのサブネット化方式が使えるかは、使われている経路設定プロトコルに依存する。広く使われているRIPプロトコルのようなネーティブなIPルーティングでは静的なサブネット化しか対応していない。しかしながらRIPのバージョン2は可変サブネット化も対応している。

 

静的なサブネット化というのは、サブネット化したネットワーク内の総てのサブネットが同じサブネット・マスクを使うことである。これはシンプルでまた実装が簡単である。しかし反面小さなサブネットにも同じアドレス空間が割当てられ、無駄使いにもなる。例えば、たかだか4台のホストからなるサブネットに対して255.255.255.0というサブネット・マスクを使用すると250ものIPアドレスが使われないままとなる。また、新しいサブネット・マスクに再編成しようとすると困難を伴う。現在総てのホストとルータはこの静的サブネットに対応している。

 

他方動的な可変長サブネット化が使われていると、そのネットワークを構成しているサブネットは各々異なったサブネット・マスクを使うことができる。少数のホストしかないサブネットに対してはそれに見合った収容能力のサブネット・マスクを割当てることができる。反対に大量のホストからなるサブネットにはより大きな容量を持つサブネット・マスクを割当てることができる。これによりアドレス空間の節約と効率的な使用が可能となる。またあるサブネットをさらに新たなサブネット・マスクのビットをつけて分割することもできる。そのような変更に対してもその他のサブネットへの変更は生じない。このような可変長サブネットに対応していないホストやルータが存在するので注意が必要である。可変サブネットに対応するルータでネットワークを分離すればそのようなサブネットを構成することができる。サブネット間を可変サブネット対応のルータで接続すると、ホストは可変サブネット対応でなくても良い。そのようなホストが基本IPルーティングだけを使い、サブネットに関する問題をそのルータ(デフォルトとして)に任せればよい。

 

 

 

 

前節     目次     次節