RFC 2516(PPPoE)邦訳版

 

注: この資料はIEで閲覧ください。

 

 

RFC 2516 (PPPoE: A Method for Transmitting PPP Over Ethernet)邦訳

 

 

邦訳にあたって

 

PPP(Point-to-Point Protocol)は、通信回線をはさんで2つのコンピュータがデータ通信する場合に標準的に使われるデータリンク層(またはMAC層)プロトコルである。PPPは、皆さんがアナログ・モデムを介してインターネットをアクセスする場合などで動作しているが、通常はこれを意識する必要はない。最近はFTTHDSLサービスでPPPoE(イーサネット上でのPPP接続)やPPPoAATM網上でのPPP接続)などが注目されているので、一応の理解が必要になってきている。PPPoE 仕様書RFC 2516 は日本語化されたものはまだ公開されていないので、このサイトにアップロードした。

 

 

PPPoEとは?

 

いわゆるSOHOや小企業では、一本のインターネットやアクセス回線を複数のユーザで共用しようと言うのが一般的であろう。特に最近はDSLサービスが高速で手軽なアクセス回線として拡大してきている(ケーブルモデムもブロードバンド インターネット アクセスの手段として普及が目覚しいが、これはPPPを使用していないのでここでは対象としていない)。

 

一般的なDSLではユーザ側に設置されるDSLモデムはイーサネット・ポートがついている。モデムはこの場合MAC層ブリッジとして機能する。つまりトラフィックを局舎(CO)またはリモート ターミナル(RT)にあるDSL集合モデム(DSLAM)ATMPVC(固定接続型仮想チャネル)を介して伝送する。すなわちDSL網はATMで構成されている。その先のISPへもそのままATMで接続されるか、フレーム・リレーやTDMなどで接続される。またこれから日本が先行して普及するであろうFTTHの場合も、宅内または近隣のゲートウエイ装置まではATMで構成されよう。

 

従来のPPP接続に対しては、ユーザは接続の際にIPアドレスを設定しなければならなくなっているので、DSLは問題を生じない。この場合はDSLは常時接続サービスとして使われる。

 

しかし複数のユーザがDSLリンクを共有した場合は、ユーザーごとの認証、ユーザごとに異なったISPとの接続などが必要になろう。PPPoEはこのような背景から生まれたものである。ただしRFC 2516はまだ標準化の過程に乗っている訳ではなく、Informationalなメモの段階である。しかし市場はどんどん進んでおり、IETFといえども市場競争の中、やや後追いの状況にある。このドキュメントだけに頼っていると競争には追いつけないことも事実である。

 

DSLによるブロードバンド インターネット サービスを推進しようとした場合の問題は、IPアドレスの枯渇であろう。これには幾つかの解決法があるが、ISPや装置メーカはPPPoEでこれを解決するのがベストであると固執している。その理由はIPアドレスを最大限に節約でき、また設定が簡単、ATM網の効率的使用、ユーザ装置の低価格化であるとしている。

 

ISPにとってみれば、自分に与えられたIPアドレスは限られている。したがってこのアドレスをISP側でプールしておき、ダイヤルインしてきたユーザたちがオンライン使用中にこれを共有してもらえば、いつも常時接続でIPアドレスが各ユーザに固定するよりは効率が格段にあがる。DHCPはアドレスをユーザに割り当てる機能であるが、これは個々の端末側でアドレスを設定する手間を避ける為で、アドレスの節約を意図したものではない。したがってPPPoEの第1の必要機能は、ダイヤルアップのエミュレーションである。

 

PPPoEは個々のPPPセッションをイーサネット接続された端末にマッピングする。従って各ユーザは、そのセッションの期間だけ自分のIPアドレスを取得する。このアプローチの代わりとも考えられるNAT(Network Address Translation, RFC 1631)は、問題を抱えているとPPPoE推進派は指摘している。

 

ひとつのDSLリンクをイーサネット上の複数のユーザが同時にアクセスする必要が生じたときは、ATMPVCは各ユーザと相手のISPとの対向ごとに設定されなければならない。即ち、あるイーサネット上のユーザがひとつ以上のISPを利用したり、VPNで企業内ネットワークに接続したりするときは、それぞれの対向ごとにPVCが張られねばならない。NATは総てのトラフィックをひとつのIPアドレスで対応しようとするので、ひとつのPVCでしか対応できないのである。

 

このほかの解決策としては、ユーザ側にイーサネット・ポートを持ったATMスイッチを置くことだが、いまのところそのようなアプローチは少ないようである。

 

PPPoEはクライアント側にその為のソフトウエアをインストールする必要があるし、DSLAMもこれに対応できるようになっていなければならない。クライアント・ソフトウエアは、まだ枯れてはいないようである。また従来のDHCPに馴染んだクライアント側にしてみれば、このようなアドレス付与はいささか不都合なことが生ずるかもしれない。その場合は、多少コストがかかるがPPPoE対応アクセス・ルータ(NTT-MEなどが用意している)をかませ、LAN側はプライベート・アドレスを使うことも考えられる。この辺は今後普及が進むにつれ解決されるのであろう。

 

PPPoEはイーサネット上のアクセス集線装置(コンセントレータ: DSLATM回線をブリッジとしてまたぐ)との間でPPPリンクを張るもので、まず理解を早めるために基本的なシーケンスを示そう。端末側から集線装置にむけて必要なサービスに応じてくれそうな集線装置を探す為に、開始パケットをブロードキャストする。要求されているサービスに対応可能な集線装置は提示パケットを該端末に返す。つぎに端末は特定した集線装置に要求パケットを送る。対応する集線装置は唯一無二のセッションIDでもって確認パケットを返す。以降はそのセッションIDをもとに従来のPPPが実行される。終了にあたっては、PPPによる終了手続き以外にもPADTパケットによる終了手続きが用意されている。

 

テキスト ボックス: 本ドキュメント外
 


注:点線で囲った部分は条件によっては存在しない。